■ 漢方治療の現場から・・・・アトピー性皮膚炎
中医学からみたアトピー性皮膚炎
防衛機能と血液が助け合って皮膚の健康が保たれる
皮膚を健康な状態に保つ機能を「衛気[えき]」といいます。汗腺の開閉を調節したり、皮膚の緊張度を適度な状態に保って体温を維持すると同時に、皮脂腺の分泌を通じて皮膚に潤いを与えるという、総合的な作用によって、からだの表面を守っています。
この防衛機能がうまくはたらくために、なくてはならない材料は「営気[えいき]（血）」と呼ばれる物質で、体液とその一部分である血液の中を流れています。これらは、いずれも、飲食物が消化・吸収されてできた非常に細かい栄養物質からつくられます。
ですから、皮膚を健康に保つためには、営[えい]と衛[え]が調和していることが条件です。それには、まず胃腸が健康で栄養代謝が盛んでなければなりません。
アトピー性皮膚炎にかかりやすいのは胃腸の弱い乳児（赤ちゃん）
生まれつき消化吸収力や栄養の代謝が悪い場合、乳児のからだは、防衛機能と血液の調和が乱れた状態になっており、からだの中に不要な水分や熱が生まれやすくなっています。からだがこのような状態のときに、外から浸入した風に、不要な水分あるいは熱が結びついたものが原因となって起こるのが、乳児のアトピー性皮膚炎です。
乳児（赤ちゃん）のアトピー性皮膚炎の症状は治しやすい
乳児のアトピー性皮膚炎の特徴は、耳のまわりがただれる「旋耳瘡[せんじそう]」ができたり、ほおや頭に丘疹ができるというように、頭や顔、首に症状が現れる点です。これは、からだの上部や表面をおかす、風の性質があるからです。痒みが非常に強く、掻くと黄色い液が流れたり、血がにじむこともあり、ただれます。あとにはみかん色をした、脂っこいかさぶたができます。
風の症状が軽い場合は、熱の症状も軽くなり、主に不要な水分による症状が現れます。両ひじや両ひざの裏側に白い丘疹ができる「四弯風[しわんふう]」が特徴です。痒みは少なく、ただれることもなく、部位もあまり移動しません。掻いたあとには白い線が残ります。
乳児（赤ちゃん）のアトピー性皮膚炎は、胃腸を補うだけで完治する
乳児のアトピー性皮膚炎の根本的な原因は、胃腸が弱いという点です。そのため、胃腸を補って栄養の代謝を盛んにし、不要な水分や熱が生まれないようにすることが、治療の原則です。そのため、
ごく初期のアトピー性皮膚炎では、病因を取り除かなくても、からだのはたらきを補う治療をするだけで、治ってしまうことがよくあります。
たとえば、生後六ヶ月くらいまでの乳児なら、「
補中益気湯[ほちゅうえっきとう]」だけで治ることがあります。
漢方薬アドバイス
成人のアトピーは複雑です。店頭でご相談ください。
生活アドバイス
●綿製品の使用をお勧めします。
●部屋の掃除を丁寧に
●ストレスを避け、リラックス
